第二部 七空村

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あやふやな日々のなか、自殺には様々な知識が必要だった。 たとえば線路に飛び込む、歩道橋から飛び降りる。 これらは他者に迷惑をかけ過ぎるので、やらない。 それから、自殺としてかなり苦しむ方法。 これも避けたい。 失敗率が高い方法も後遺症で倍に苦しむ。 俺とクリタは、それらについても話し合った。 やはり自殺の名所に向かうべきか? そういう意味では「王生菜由子」のブログは為になった。 しかし、あるときに王生のブログが軽く炎上した。 『心霊スポットで本当の霊体験をした』という書き込みで。 『○○町の、いまは使用されてないトンネル! あそこで××くんと名前を呼ぶと、命が欲しくて 少年が笑いながら追いかけてくる......。 これデマじゃなかった!追い駆けられた!都市伝説じゃない! ネットにあった対処法の、身に付けてるモノを投げる。 それを思い出して、かぶってた帽子を投げた。 そしたら、その子が帽子を拾って、かぶって、足を止めた。 そして......ひきつった顔で、ずっと笑ってた。 いま、書き込んでても、何度も指が震える......。 怖かった、怖かった、怖かった、もう心霊スポットは行かない!!』 ガチで怖いとクリタと会話したが、人によって意見は違った。 『盛大なネタ作り、お疲れサマー』 『ブログのランキングをそんなに守りたい?必死でドン引き』 『え?ガチで怖がってる私は騙されてるの?』 『いやいや、いままでどこに行っても普通だったじゃんか』 『突然過ぎて信憑性に欠ける』 『いくるみちゃーん、恐いなら抱きしめてあげるーっ』 休日になると、不気味な場所へと小旅行みたいに出かけて行く。 しかし彼女の文面は明るくて、ほのぼのしていた。 それが急に心霊体験になった。 周囲はそれを叩き始めて、そのブログだけは本人が削除した。 クリタは『ネットのほうが、匿名の書き込みのほうが怖いね』 と、学ぶことができていた。
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