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神は人の存在に生死に、関与してはならない。
藤生......おまえはあのとき、わかっていたんだな。
結婚相手の彼女が、俺を殺そうとしていたことを。
だけど、それを言うわけには、いかなかったんだよな。
藤生、ごめんな。
俺は、消えゆくおまえにロクにさよならも言えなかった。
そして大切な忠告を聞こうともしなかった。
そんな、馬鹿な男になっていたんだ。
ただ社会に流されながら吞み込まれるだけの人間に。
いや、そんな風に波から波へと逃げ続けていたんだよ。
それでもいいような気がしていたから。
老うことのない両親、死なずに済んだ弟、永遠の猫。
人の世で叶わぬことがすべて叶っていたんだ。
それはそれで嬉しかったんだ。
あとは俺が普通に生きればいいだけだ。
安定した職に就いて、金を自力で稼いで、そして結婚して。
そして......子をつくらず、七空の血を俺で終わらせる。
それですべてが解決するのだと......。
藤生、父さん、母さん、アオメ。
俺は決めたよ。
俺ひとりだけが、ただ、人として生きていくなんて間違ってる。
みんなが永遠であることもまた、間違ってるんだ。
だから、すべてにケリをつける。
長男として、生き残った最後のひとりとして。
そして、その前にやるべきことがあった。
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