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「それで?恵さんは好物は油揚げですか?」
正体がキツネの神様である彼に対して、俺はちょっとしたイヤミをこめて
言ってみた。
「いえ、茶わん蒸しですよ」
なんのためらいもなくサラリと恵氏が言った、茶わん蒸しを食べながら。
「茶わん蒸しは私が作ったのよ、愛する旦那様のためにね。
それにしても中身にキノコ類をいれてなくて良かった~!
セーフ、セーフ!」
おどけたポーズまで見せる恵麻さんも、ずいぶんと人間らしく
なったものだ。
「あはははははっ」
そこで急にクリタが笑い出した。
「え、なに?なんか変なもん食ったのか、クリタ!」
「だって、キツネの神様だからって油揚げが好きか聞くなんてさ、
落合さん安直すぎ!」
「はいはい、すみませんね。どうせ俺は、え......は?
えっ、えええええええええっ!」
俺はおもわず椅子から立ち上がった。
「クリタ!おまえいまなんて言った!!」
「落合さんは安直すぎって。あははっ、その前でしょ?
知ってるよ、ちゃんと聞かされたから。
あのね、家族4人になったことだし、
家のなかで隠し事は無しにしようって。
何もかも話してくれたよ。お義父さんが。
神社のお供えの大福も、和を増やしてみんなで作って、みんなで食べてるよ」
「マジかぁ......」
「落合さん、僕も養子になってから初めて聞かされたんですよ」
「落合さんでも見抜けなかった? 我が家の勝ちだね」
なんだこの最強夫婦は!
「そういう問題じゃねえわあ~」
俺は座り込んだ。
椅子ではなく床へと......。
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