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「うわっ、すげえ良い香り、なんだこの茶は。茶菓子も欲しくなるな。
座布団より、菓子を持ってこいっつーの」
値段はいくらだろう?なんて気になるほど豪華さのある急須と
湯呑み茶碗は、中身もすごかった。
「菓子で和やかに話せるようなことではない」
「な、なんだよ?」
「いつか話したかったことだ」
「ふーん」
俺は差布団に座ったまま両足を伸ばした。
「恵麻が口悪い女になってしまったのは、理由があるのだよ。
言い訳にしかならぬのだが......」
「ものごとには何でも理由があるもんだよ、話してみろよ」
「えらそうだな」
「いまさらあんたに遠慮がいるかよ、いいから話せって。
あんたも遠慮なく、いくらでも言ってこい」
「儂はな、この服が普段着だった頃、遠い遠い昔に
とある村の守り神をしておったのだよ。
80人ほどの住む小さな村を。とても豊かな暮らしにあふれた村を。
だがな、儂と恵麻がほんのわずかなあいだ、村を離れていた隙に。
盗賊団が押し入り、村を全滅させてしまったのだ。
たった1人の赤子を除いて、惨殺されていた......」
俺は反射的に座り直した。
ダラダラとした態度で聞けることではなかったからだ。
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