第三部 最終決戦

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晴神が窓の外をみつめた。 雪は降り積もり続けた。 まるで歴史を塗り替えるように。   「この幾千幾万も降る雪よりも少ない命だが......儂と恵麻は、 それよりも多く涙を流したよ。 それからだ、恵麻が人を罵るようになったのは。 そして人の内面を見る力を、鍛錬を繰り返して身に付けた。 悪人と善人を見分ける為にと」 「良くも悪くも、けなげだな......」 「そうだ、そこに儂は惚れたのだ」 「いまは、その気持ちが......わからないでもないよ」 「それはありがたい。 そうしてな、儂は長い年月をかけて理想の村を 作り直すことにしたのだ。それがこの陽輝村だ。 ここに移住してきた者たちは、半分は偶然ではない。 死んだ村人たちの生まれ変わりを探し当てたのだ。 せめてもの......詫びの為に」 「村の、再生......魂ごと?」 「そうだ。人が住むに適した山奥を探し回り、 地盤も気候も最適な場所をみつけ、その土地を買い取った。 そして転生した者たちの年齢の頃合いを見計らい、居住者を募った。 意識は、ほんの少ししか押していない。 やはり前世での想いが、わすがに残っているのだろう。 そうして誰一人として欠けることなく、移住させることができた。 ときとして人間以外に転生した者もいた。 その生き物も住まわせている。 動物も虫も山道で車に轢かれぬよう、農作業で殺られぬよう、 儂が意識を向けさせて守っている。 それ以外、善人とみなされば新規も迎えている。おまえのようにな」 「だとすると、章真さんは......もしかして」 「あのとき、たった1人、生き残った赤ん坊の子孫だ。 あの子の場合はな、殺されたときの先祖の力が強く ずっと守っておるのだよ......。 災害で生き残れたのも、先祖の力だったのだ」 「それで、彼だけは自分の子にしたのか」 「そうだ。先祖たちを安心させる為でもある」 なんという壮絶さだろう......。 一度の罪を償うために、こんなにも平穏で住みやすい村を自力で 作り上げたのか。   降る雪が景色を覆うように積もった悲しみを、この神は振り払い、 命を芽吹かせたのだ。 何年も何年もかけて、あきらめずに。 「捕獲管理機関を作ったのも、この過ちを繰り返さぬ為だ」 かける言葉がみつからず、黙る俺へと晴神から言ってきた。 「盗賊団だからと、村ひとつを襲い切れる筈がなかったのだよ。 奴らは超亡霊を手に入れ、自身らの強欲を叶えたのだ」 俺は更に言葉を失った。
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