第一部 闇から雨のち晴れ

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「妖怪はな、光を嫌うでな、だから暗いところにいる。 追い払うには、光るモノを見せればいいのだよ」 そう言いながら男が、土の壁に深く刺さった鎌を引き抜いた。 鈍い銀色の光が流星のような残像を走らせた。 「あぁ~っ、た、助けてくれて、ありが......とぅっ、ぐっ、げほ!」 礼を言いながらも、また俺は咳き込んだ。 なんかもう心身共に瀕死だ、それでも命は助かったらしい。 「儂に仕える者でなあ、どうにもタチの悪い奴でなあ、すまんなあ」 「は?」 男が黒いフードコートの、フードを脱いだ。 男は......首から上、顔のみが......狐だった。 狐の面とかではない、完全たる獣の頭部だったのだ。 「儂はな、陽輝村の守り神なのだよ」 「かっ、神様ぁっ? 」 俺は声を裏返して叫び、また咳き込んでしまった。 「おまえさんは良いお人だ、じつに良いお人だ。 あれだけ自身を罵倒されても黙り通しておったのに、 他者の苦しみへと怒りを現わにした。それはとても良きことだ」 「なんだそりゃあぁぁぁっ! よくわかんねえけど、ブン殴るぞ!てめえっ!!」 なにが神様だ......っていうか、人間じゃないなら殴っても傷害罪に ならないよな? いや、狐なら動物虐待になってしまうのか? という勢いの怒りだったが、殴るような体力も気力も無かった。
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