プロローグ

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「あ、はい、これ、開業祝いのプレゼント。 花よりこっちかな?って」 私は洋酒の瓶の入った紙バックを彼に渡した。 「おぉっ、これよこれ!重たかっただろ、ごめん、ありがとうな」 いまさら敬語なんて無しってことで、タメ口で自然に話せた。 落合さんはネットのノリそのもので、優しくてゆるやかだった。 「それにしても住まいと事務所とで、上手く分けられてるね」 リビングにシンプルなデザインのソファーとセンターテーブルが 置かれているが、木製の衝立で仕切られて隠された廊下から先は 彼のプライベート空間になっていて、トイレ、バスルーム、寝室。 それらがすべて、まとまった位置にあるそうだ。 「プライベートは、みっともなくて、お見せできませんけどね。 ほい、まあ飲めよ」 落合さんがセンターテーブルに、ホットミルクとスプーンと、角砂糖の 入った瓶を置いてくれた。 「あ、ありがとう」 あたしはソファーに座る。 「身体の具合は?どうだ?横浜からわざわざ来なくてよかったのに」 「大丈夫、でも、これ以上の遠出は無理かな。 それよりみてネイル!彼が似合うって言ってくれたやつ。 これをね、わざわざ見せに来たのよっ!」 私は両手の甲を向けて落合さんに見せた。 「今更、俺の前で強がるなよ。何があった?」 「は?」 「なんでホットミルクを飲まない?砂糖さえ入れない? 熱々で飲むのが好きなのに。なんで飛びつかない? なんか考え事してるだろ、話してみろよ」 驚いた私は、手を引っ込めてうつむいた。 「落合さんは、本当に探偵に向いてる人だね。 落合さんが死ななくてよかった。きっと多くの人を救えるよ」
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