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車が走り出してからしばらくは陽輝恵氏も俺も無言だったが、カーブが
少なくなったあたりで俺は言った。
「おい、晴神さんよ、人間の姿で義理の父親やるのは楽しいかい?」
咄嗟に陽輝氏が急ブレーキをかけたので車が横滑りして停止した。
対向車が向かってきたなら確実に衝突していたところだ。
しかも山の上のほうだからガードレールを突き抜けて崖へと落ちるか
反対側の岩肌にぶつかっていたかもしれない。
「なにすんだ、てめえ!!
おまえのせいで1日で2度も死にかけたじゃねえか!!」
シートベルトをしていてもかなりの衝撃だった。
正体がバレていることで衝撃を受けた神様は、運転席でハンドルに
顔を伏せていたが、顔を上げた途端に瞬時にして狐の顔になった。
「おまえのせいだ!驚かすのは悪しきことだ!!」
「トンネルで俺のこと驚かしたクセになに言ってんだ......」
俺は助手席でぐったりして車の窓越しに空を見上げた。
田舎だから終バスが早いとのことで、村に数時間しかいなかったのは
そのせいだ。
もう辺りは薄暗くなり、広がる山々を夕日が燃やすように染めていた。
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