第一部 闇から雨のち晴れ

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車が走り出してからしばらくは陽輝恵氏も俺も無言だったが、カーブが 少なくなったあたりで俺は言った。 「おい、晴神さんよ、人間の姿で義理の父親やるのは楽しいかい?」 咄嗟に陽輝氏が急ブレーキをかけたので車が横滑りして停止した。 対向車が向かってきたなら確実に衝突していたところだ。 しかも山の上のほうだからガードレールを突き抜けて崖へと落ちるか 反対側の岩肌にぶつかっていたかもしれない。 「なにすんだ、てめえ!! おまえのせいで1日で2度も死にかけたじゃねえか!!」 シートベルトをしていてもかなりの衝撃だった。 正体がバレていることで衝撃を受けた神様は、運転席でハンドルに 顔を伏せていたが、顔を上げた途端に瞬時にして狐の顔になった。 「おまえのせいだ!驚かすのは悪しきことだ!!」  「トンネルで俺のこと驚かしたクセになに言ってんだ......」 俺は助手席でぐったりして車の窓越しに空を見上げた。 田舎だから終バスが早いとのことで、村に数時間しかいなかったのは そのせいだ。 もう辺りは薄暗くなり、広がる山々を夕日が燃やすように染めていた。
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