第一部 闇から雨のち晴れ

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「落合さんが終バスを逃してしまったよ。 もちろん町まで送れるけれどね、落合さんがね、 せっかくだから茜さんのことも含めて談話したいと言ってきてね それからね、例の件について探偵として力を借してくれるそうだ」 などと、晴神が章真さんに言い訳している。 ニコニコとさわやかで、人間を偽っているというより二重人格だな。 「それは歓迎しますよ!丁度良かった、今夜の夕飯は僕の手製の カレーなんです。人数が増えてもオッケーです!」 章真さんは裏表が無いという感じだ。 栗田茜は良い人と巡り合えてラッキーだったと思えた。 そうして三人で夕飯のカレーを食べた。 自炊は親子で得意なのだそうだ。 食後にコーヒーを淹れてもらって、リビングで章真さんとクリタとの 馴れ初め話しを聞いた。 「それで、例の件って、なんですか?」 なんか変なことに引き込まれた感が強い。 「実はですね、神社への供え物が無くなっているですよ」 「は?」 晴神の言葉に目が点になりかけた。 「陽輝村の発展を祈る神社には、境内に供え物が置いてあります。 私の家で手作りの大福を一つ供えているのです。 これは村の長としての役割のひとつです。その大福は朝方に作って、 タッパーに入れて、境内に供えます」 「毎日ですか?」 「そうです」 「お義父さん、落合さんになら話してもいいんじゃないですか?」 「そうだね、話そうか。大福はね、毎日、消えるのですよ」 「は?」
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