プロローグ

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「クリタだって、世話になってる親戚とか、そのネイルを褒めた恋人。 いろんな人たちにとって、生きててくれてよかった相手だ。 そして、俺にとっても。なにしろクリタと出会えたおかげで、 俺は生き延びれたんだから」 落合さんが口元をゆるめて微笑んだ。 無邪気な笑顔が見れるのも、ネットから飛び出したおかげ。 明けない夜なんてないのなら......。 夜だけの世界に逝きたい。 もちろんそんな世界はなくて、遮光カーテンの隙間に見える 外のからの攻撃のような光に怯えていた。 そういう誰にも話せないことを、私たちはネットで話し続けた。 そうしていつしか思えたのだ。 『もっともっと話していたい』と。 『生きていこう』と。 落合さんの読んでいた、自殺志願者の女性のブログが削除されたとき。 二人で「死んでいないといいのに」と、思えるようになったほどに。 『得体の知れない死への逃亡』から。 『現実的な生きている日々』のなかで、浄化されていったのだ。 そしていまも......。 私は顔を上げた。 「落合さん、探偵の落合さんへと、依頼させてください!」 落合さんは崩していた姿勢を正した。 「あたしの彼氏の実家、その村のことで、相談があるんです」 こうして落合さんは出向くことになる。 『陽輝村(ようきむら)』へと。 それは落合さんが、死にたくなるほど苦悩した......家系の呪い。 それと向き合う運命へと、つながっていった。 ネットでの出会い、恋人の実家の村、そして、落合さんの家。 不可思議な運命の歯車が、確かに回る音がした。 ――完――
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