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「朝方に供えた大福は夕方には消えます。
この村の唯一の不思議な出来事です。
車の中で言ったでしょう?『無いけど無いわけでもないかなあ』」
これのことですよ。ちなみに村人たちは納得しています。
晴神様が大福を食べることで満たされて、村も潤うと」
俺はチラリと晴神を見た。
「大福おいしいです」という顔で笑っていた。
自分で作って自分で食べてるわけか。
「ところがですね、このところ大福が午後には無くなるんです」
「え?」
「もう二週間も前からです。
僕と茜の結婚が早めようとなったのは、そのせいでもあるんです。
僕が早く跡取りになるべきだと、
新しい長が必要な時期がきたのではないかと、村人たちが......」
晴神がコーヒーをすすった。
「このまま晴神に供え物が行き渡らなければ、村の危機だと。
言い始める人もいましてねえ」
「食べ物、食べ物ですか、そういえば村の人たちと挨拶したとき、
食べ物の話しをしましたよねえ、あ......」
俺は思い出した。
「わかりましたよ、供え物を食う村の男性がいます」
「え?」
親子で同時に声を出した。
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