第一部 闇から雨のち晴れ

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「朝方に供えた大福は夕方には消えます。 この村の唯一の不思議な出来事です。 車の中で言ったでしょう?『無いけど無いわけでもないかなあ』」 これのことですよ。ちなみに村人たちは納得しています。 晴神様が大福を食べることで満たされて、村も潤うと」 俺はチラリと晴神を見た。 「大福おいしいです」という顔で笑っていた。 自分で作って自分で食べてるわけか。 「ところがですね、このところ大福が午後には無くなるんです」 「え?」 「もう二週間も前からです。 僕と茜の結婚が早めようとなったのは、そのせいでもあるんです。 僕が早く跡取りになるべきだと、 新しい長が必要な時期がきたのではないかと、村人たちが......」 晴神がコーヒーをすすった。 「このまま晴神に供え物が行き渡らなければ、村の危機だと。 言い始める人もいましてねえ」 「食べ物、食べ物ですか、そういえば村の人たちと挨拶したとき、 食べ物の話しをしましたよねえ、あ......」 俺は思い出した。 「わかりましたよ、供え物を食う村の男性がいます」 「え?」 親子で同時に声を出した。
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