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「供え物を食べている人物がいます。これから会いにいきますか?」
「落合さん、誰かわかったんですか!」
「はい、昼間に村を歩いていたときに、食べ物の話しになりしたよね。
そのとき、ある男性に言われました
『神社の供え物は抜群に上手いぞ、手作り大福にしようや』と。
この家で作って神様が食べるのだから、村人は味を知らない筈です。
しかし、あの人は言いました。おいしいと」
「村川さんです。お義父さん、行ってみましょう!」
そうして三人で村川という男の家に行った。
彼は家族に知られたくないからと、外で話すことになった。
「すみせん!食べていました、でも俺じゃないです。
母に、病気の母にあげていたんです。
神の食べるものなら難病にも効くんじゃないかと......
特別に分けてもらったと言ったら、他はあまり食べないのに、
おいしい、おいしいって、食べてくれて、嬉しくて。」
土下座する村川さんの背中を晴神が撫でた。
そこへ俺は言った。
「残念ながら効力は無いのですよ。ただ、あなたのお母さんを、
それより、町よりもずっと大きい病院で診てもらうべきです。
神頼みではなく、医療を信じましょうよ」
村川さんのすすり泣く声の中、音もなく雪が降り始めた。
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