第一部 闇から雨のち晴れ

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あの異様な出来事から数週間後。 クリタが、報告とお礼を兼ねて探偵事務所を訪れてきた。 「章ちゃんが大学をちゃんと卒業してから、結婚することになったよ。 それでね、私も村で暮すことに決めた。 生活環境を変えることも、ゆっくり時間をかければやれそうだから。 それに、地主の嫁だからって大変なわけじゃないから安心できた」 フッ切れたように明るい顔つきになった彼女は、今回は俺の淹れた ホットミルクに、角砂糖もいれて飲み干してくれた。 「なるほど、それは良かった。でも俺がわざわざ村に行かなくても 解決した案件だった気もするよな」 「そんなことないよ!落合さんが村を見に行ってくれて助かったよ。 落合さんが、村の事件まで解決してくれたからなんだよ。 感謝してます。本当にありがとうございました!」 「いやいや、クリタには恩があるし。 それにこれは仕事としてやったことだし」 「うん、そうだね。でも、すごく頼もしかったよ! それに探偵って、人の役に立つことができる素敵なお仕事だね。 私も、村の役に立てるように頑張ってみたい」 「そうか、良かった。良かったよ......」 いま、目の前の人間に褒められているのに、俺は......。 トンネルの中で女に言われた暴言のほうを思い出していた。
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