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あの異様な出来事から数週間後。
クリタが、報告とお礼を兼ねて探偵事務所を訪れてきた。
「章ちゃんが大学をちゃんと卒業してから、結婚することになったよ。
それでね、私も村で暮すことに決めた。
生活環境を変えることも、ゆっくり時間をかければやれそうだから。
それに、地主の嫁だからって大変なわけじゃないから安心できた」
フッ切れたように明るい顔つきになった彼女は、今回は俺の淹れた
ホットミルクに、角砂糖もいれて飲み干してくれた。
「なるほど、それは良かった。でも俺がわざわざ村に行かなくても
解決した案件だった気もするよな」
「そんなことないよ!落合さんが村を見に行ってくれて助かったよ。
落合さんが、村の事件まで解決してくれたからなんだよ。
感謝してます。本当にありがとうございました!」
「いやいや、クリタには恩があるし。
それにこれは仕事としてやったことだし」
「うん、そうだね。でも、すごく頼もしかったよ!
それに探偵って、人の役に立つことができる素敵なお仕事だね。
私も、村の役に立てるように頑張ってみたい」
「そうか、良かった。良かったよ......」
いま、目の前の人間に褒められているのに、俺は......。
トンネルの中で女に言われた暴言のほうを思い出していた。
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