第一部 闇から雨のち晴れ

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冬と春が過ぎ、梅雨の時期になった頃、クリタからではなく 陽輝章真氏から連絡がきた。 「父が結婚することになったんです。 よろしければ式に出席してもらえませんか? 茜は通院している担当医から許可が出て、もうこちらに来ているんです。 茜が、落合さんは形式ばったものは苦手だろうからって、 止めてきたんですけど、それならせめて式の後の祝宴でのご馳走を 食べてほしくて。すみません、急に。 でも、落合さんにはお世話になったし、これからも懇意でいたいんです」 なんともまあ、まだ21歳なのに、誠実な青年だ。 神様に育てられたせいなのだろうか? 「暇すぎる探偵としてはね、急でも平気ですよ。 喜んで出席させてもらいます」 「ありがとうございます!嬉しいです。あ、洋酒はたくさんありますよ」 ちょっと、泣きそうな気持ちになった。 俺が日本酒とビールは苦手で、洋酒しか飲まないのを把握してくれたのだ。     神様が結婚するとか、そこはどうでもよかったけど。 なにがなんでも出席したいと思えた。 「それから父の結婚相手のことなんですけど。 要するに僕たちの義理の母になる方、 とても良い人です。茜は仲良くなってますよ。もちろん僕もです」 そうか、そこまで報せてくれてありがとう。
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