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第一部 闇から雨のち晴れ
山奥のさらに山奥なのだと聞いてネットで場所も調べていた。
しかしバス停からあまりにも遠い、遠過ぎる。
誰とも出会わず、俺だけが落ち葉を踏んで歩いていく鈍い靴音と
次第に息切れして、不規則になっていく呼吸だけが響いている。
冬の木立ちの美しさ、寒さのなかにもホッとさせる緩い陽光。
都会の喧騒とかけ離れた静寂、凛とした澄んだ空気。
それらに浸るような余裕もなく歩いた先で小高い山へと着いた。
「と、ん、ね、る......?」
ようやく俺は足を止め、ひと息つくために立ち止まった。
トンネルというか、空洞というか、ただの舗装もなにもされていない穴?
とにかく山を雑に掘り抜いて作った通り道があって、背の高い大人でも
余裕で歩けるくらいの高さと、5人くらいなら並んで歩ける広さがある。
大丈夫か?これ、途中で崩れたりしないよな?
と、思いながら、歩を進めようとしたら......。
脇道の林から黒いものが出てきた。
「うわあぁっ!!」
動物かとおもって叫んだら、よくみるとそれは人だった。
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