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「あの、それから、あの、あの......まだ、お礼がっ」
恵麻さんが、なんだかおくゆかしい態度で身をよじっている。
「な、なんすか?」
「晴神様が...身なりを変えた私に対して『綺麗になったな』って
言ってくださって......しかも『一緒に現代社会を学んでいこう』って
励ましてくださって『おまえには素直さがあるし、努力家だ』って
褒めてくださって『恵麻』と、名前で呼んでくださるようになって
私、とてもとても嬉しくて、それで......その......日の下にも
出れるようになって......」
んんんっ?なんだこの乙女っぽさは!
「あっ!もうすぐ雨がやんで一気に晴れます、迎えの車も来ます。
すみません、失礼します」
彼女は今度は、挨拶のほうの『すみません』を口にした。
「私、ちょっと抜け出してきただけなので、もう行きますね。
落合様、ほんとうにありがとうございました!」
おおおっ落合様って!
恵麻さんは道なき道へと入り込み、生い茂る緑のなかへと消え去った。
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