第一部 闇から雨のち晴れ

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「あの、それから、あの、あの......まだ、お礼がっ」  恵麻さんが、なんだかおくゆかしい態度で身をよじっている。 「な、なんすか?」 「晴神様が...身なりを変えた私に対して『綺麗になったな』って 言ってくださって......しかも『一緒に現代社会を学んでいこう』って 励ましてくださって『おまえには素直さがあるし、努力家だ』って 褒めてくださって『恵麻』と、名前で呼んでくださるようになって 私、とてもとても嬉しくて、それで......その......日の下にも 出れるようになって......」 んんんっ?なんだこの乙女っぽさは! 「あっ!もうすぐ雨がやんで一気に晴れます、迎えの車も来ます。 すみません、失礼します」 彼女は今度は、挨拶のほうの『すみません』を口にした。   「私、ちょっと抜け出してきただけなので、もう行きますね。 落合様、ほんとうにありがとうございました!」 おおおっ落合様って! 恵麻さんは道なき道へと入り込み、生い茂る緑のなかへと消え去った。
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