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「あ、あの、章真さん。
お父さんが結婚する相手は、どんな女性ですか?」
「はい?あぁ、詳しくは言ってなかったですね。
村に独りで移住してきたんですけど、奥地で引きこもっていた女性で
父さんが色々と世話してあげてるうちに、心の距離が縮まって
恋仲になれたそうです。
若い女性で、ちょっとだけ年の差結婚ですけど、お似合いですよ。
長身でショートカットの綺麗な人です。
あ、明るいところ?太陽とか、人工的なライトとか、光るものが
苦手だったせいで引きこもっていたのに、克服したそうです」
「苦手?明るいとろや光が!」
「はい。すごいですよね、苦手なものを乗り越えるって努力家ですよ。
それにすごく丁寧に話す方で、でも親しみやすくて、最高の女性です」
「それは......素敵すぎる」
間違いない、彼女だ。
晴神と、それに仕える恵麻という女性が。
彼女の、あの乙女な仕草と『ちょっと抜け出してきた』と、言ったこと。
そうか、今日は文字通り『狐の結婚式』ということか。
しかも、あんな叫ぶほど嫌がっていた『光』を平気になれたからこそだ。
「いやはや、じつにめでたい日ですね!おめでとうございます!」
俺は、ロクでもない人生をおくってきて。
ののしられても仕方ない人間なのだが......。
どうやら二組もの仲を取り持つという、良きことができたようだ。
「さあ行きましょう」
章真さんにそう言われ、俺は少しだけ誇らしげな気持ちで車に乗り込んだ。
―――完―――
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