第一部 闇から雨のち晴れ

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「あ、あの、章真さん。 お父さんが結婚する相手は、どんな女性ですか?」 「はい?あぁ、詳しくは言ってなかったですね。 村に独りで移住してきたんですけど、奥地で引きこもっていた女性で 父さんが色々と世話してあげてるうちに、心の距離が縮まって 恋仲になれたそうです。 若い女性で、ちょっとだけ年の差結婚ですけど、お似合いですよ。 長身でショートカットの綺麗な人です。 あ、明るいところ?太陽とか、人工的なライトとか、光るものが 苦手だったせいで引きこもっていたのに、克服したそうです」 「苦手?明るいとろや光が!」 「はい。すごいですよね、苦手なものを乗り越えるって努力家ですよ。 それにすごく丁寧に話す方で、でも親しみやすくて、最高の女性です」 「それは......素敵すぎる」 間違いない、彼女だ。 晴神と、それに仕える恵麻という女性が。 彼女の、あの乙女な仕草と『ちょっと抜け出してきた』と、言ったこと。 そうか、今日は文字通り『狐の結婚式』ということか。 しかも、あんな叫ぶほど嫌がっていた『光』を平気になれたからこそだ。 「いやはや、じつにめでたい日ですね!おめでとうございます!」 俺は、ロクでもない人生をおくってきて。 ののしられても仕方ない人間なのだが......。 どうやら二組もの仲を取り持つという、良きことができたようだ。 「さあ行きましょう」 章真さんにそう言われ、俺は少しだけ誇らしげな気持ちで車に乗り込んだ。 ―――完―――
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