1人が本棚に入れています
本棚に追加
第二部 猫と探偵と高円寺
おまわりさん、ごめんなさい。
あたし、やらかしました。
携帯で地図アプリを使ってもさっぱりわからなくて。
野方(のがた) の駅前の交番で住所を告げて聞いてみたら......。
丁寧に教えてくださいましたよね。
「えっと、ここだから......。まず真っすぐ行って、そこに見える和菓子屋で左に曲がって、ずーっと行くと中学校があるからそこを右に曲がって、そこから、橋を渡って、それで......高橋さんて方の家の表札をみつけたら、その目の前をずっと歩いて斜め前くらいだね」
わかんなーい!橋までは来れたんだけどーっ!
そこからグルグル回っちゃいました!
野方というのは、西武新宿線 (せいぶしんじゅくせん) の各駅停車しか
止まらない質素な町で、でも駅前が充実していて住みやすそうな感じ。
でも、あたしは阿佐ヶ谷(あさがや) に住んでるから、初めてきたから
文字通り右も左も前も後ろもわからなくなった。
閑静な住宅地内が入り組み、あっちで曲がれは行き止まり、こっちを
進み続ければ、元の場所まで戻ってしまう、それの繰り返し状態です。
さっきからずっと!
あーっ!もう高橋さんの家もわかんなーい!
なに?こういうときに言うの?キツネにつままれたみたいって......。
しかしながらキツネさんにあたしは勝った!2時間かけて!
駅から徒歩15分のアパートへと......2時間!かけて!辿り着いたのだ!
おまわりさーん!あたし、あたし、やったよーっ!
とか叫びたい気分だったけど、こんな住宅が密集した場所で叫んだら
別の意味でやらかして通報されておまわりさんがきてしまう。
とにかくまあ着いて良かったし、それと秋で良かった。
もしも真夏の真昼に2時間も道に迷ったら、熱中症とかやばかった。
『キイロくんに何かしらあったのかもしれない。
自宅まで行ってみてほしい』
と、職場の上司に言われて来たのに。
それを確認する前にあたしが死んだら洒落にならない。
最初のコメントを投稿しよう!