第二部 猫と探偵と高円寺

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洒落たガレージ付きの一軒家、古風な庭のある一軒家、部屋数の多い 巨大マンション、古めかしいアパート。 キイロくんの住むアパート『キヅタ荘』は、ちょっと古い感じ? みたいな微妙さで二階建てで、全部で8部屋だった。   パッと見は鉄筋に見えるけど木造で、コンクリートの階段が急すぎて ちょっと怖いとか言ってたのも同じで、郵便受けの中味がはみ出でて 郵便物がごっそりとたまって中身があふれ出している。 あたしはゆっくりと急な階段を上がり、彼の部屋の前まで来た。 「さて......ここからだなあ」 と、自分に言い聞かせるようにつぶやいたそのとき。 「すみませーん、どちら様ですかー?」 と、男性の声が下から聞こえた。 「へ?」 声をかけて階段を上がってきた男性は、彫りの深い顔立ちで細身の イケメンだった。 やだ、カッコいい......とか、鼓動が一瞬だけ鳴ったけど。 いまはそんな場合じゃない。 「こ、これはまた、ずいぶんと大勢でいらしたんですね~っ!」 え、なに?あたし、なにか怪しまれた? あたしのところまで来たのは、イケメンさんだけではなかったのだ。 「あの、もしかしてあなたたちも、キイロ......じゃなくて、 きささ、きさぎざざざかうっえーっ」 噛んだ!っていうか一度もちゃんと言えたことないけど! 更に怪しい人と思われそう!   「木鷺坂上伊路里さんですか? はい、その件で来ました。 俺は大久保で探偵をやっています。落合(おちあい) と言います」 イケメンが!噛まずに言った!しかもイケボだ! 更に探偵とか、なにその雰囲気スペックの高さ!
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