第二部 猫と探偵と高円寺

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「探偵さんがきちゃうってことは......何か事件なんですか? あ、あたしは『本土木実 (ほんど このみ)』です。 彼の職場の同僚です。 1週間、無断欠勤してるんですけど、勝手に仕事をサボるような タイプじゃないからと、上司に頼まれたんです。 様子をみてきてほしいと。 それで自分の休みの日に来てみました。 あっ、うちは商店なので、休みはシフト制で土日は関係ないんです」 「なるほどね、俺も似たような感じです。事件というより、 事件性があるかどうか? 調べてほしいって、頼まれたんですよ。ライヴバーの店長さんに」 「ライヴバー? そういえば彼は、アマチュアミュージシャンの ライヴに行くのが好きで......」 ライヴバーというのは、東京都内にたくさんある。 そして高円寺は特に多い。 キイロくんは高円寺のライヴバーに行きやすい野方に引っ越して そして、うちの職場にきて2年。 そもそも高円寺で働き口を探した結果だったのだ。 あたしは色々と彼に聞いて知っている。 ライヴバーというのは、ライヴハウスとは少し違う形式で やる場所で、小さな店内にステージがあって、お客さんは 席に着いてお酒を飲んだり軽食しながらステージを楽しむ。 客数としては30人くらいで満席になるような場所のこと。 「じつはね、俺の探偵事務所ってのが、 大久保駅の南口近くでして。3階がうちで、2階が中華料理店で、 1階がライヴバーなんですよ。 でもライヴには興味ないから入ったことも無かったんですけど、 先日、2階の中華料理店のカウンター席同士で、 マスターの男性と偶然、出会いまして。 ちょっと気になってる常連客がいるから調べてほしいと 言われたんです」 「大久保の南口って、確か『アハールテケ』ですよね」 「そうです。よくご存じで」 「いえ、あたしもライヴは興味なくて行ったことないけど、 きさぎぎざざかか...... 伊路里くんは、行ってたそうです。 好きなミュージシャンが、そこでもよく出演するそうで」
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