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「えっと、本土さん?あなたイキナリここに来たんですか?」
「え?はい。電車で」
「いや、アパートを訪ねるなら、まず大家さんか管理会社か
不動産屋に連絡して、事情を説明したうえで、
ここ最近の様子を聞いてみるとか、責任者の立ち合いの下で
部屋の鍵を開けてもらうとか、するものじゃないですか?
それとも、彼と付き合ってて合鍵を持っている間柄ですか?」
「いえいえいえいえ!彼とは職場では仲良しですけど、
そういう関係じゃないです!
あ、そっか......そうですよね!ただ来てもダメなんだ。
だから落合さんは大家さんと、それから......」
「はい、一緒にきました」
落合さんがほんの少し不敵な笑みをみせた。
た、探偵の鋭さみたいなものを感じて......。
あたしはいろんな意味でゾクリときた。
「はぁ.......ダメダメだなあ、あたし。あー、情けない!」
「ははは、まあ、そういうこともありますよ。
とにかく偶然、来る時間帯が同じでラッキーでしたね」
「そ、そうですね!
初めてきて、野方駅から道に迷ったんですけど、
助かりました。あ~っなんだかもうドジばっかり!
仕事でも彼にはよく助けられてるんです」
「野方から?道に迷った?」
「ちょっとぉっ、あなたたちーっ、なごやかに会話してないで、
とにかく彼の生存を確認させてちょーだい!
ここは安くてボロいアパートだから、事情のある人も入居するけど
大きな事件なんてなかったのよ。
それに彼とはよく顔をあわせてたし、立ち話しもしてたの。
とっても礼儀正しくて感じの良い青年ですごく安心してたのよ。
そんな彼に何かあったなんて......。
怖いっ、怖いことになってたら嫌よぉっ、個人的にも嫌よっ!
元気に生きてて欲しいわよぉっ」
大家のおばあちゃんがふるふると震えている。
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