第二部 猫と探偵と高円寺

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「えっと、本土さん?あなたイキナリここに来たんですか?」 「え?はい。電車で」 「いや、アパートを訪ねるなら、まず大家さんか管理会社か 不動産屋に連絡して、事情を説明したうえで、 ここ最近の様子を聞いてみるとか、責任者の立ち合いの下で 部屋の鍵を開けてもらうとか、するものじゃないですか? それとも、彼と付き合ってて合鍵を持っている間柄ですか?」 「いえいえいえいえ!彼とは職場では仲良しですけど、 そういう関係じゃないです! あ、そっか......そうですよね!ただ来てもダメなんだ。 だから落合さんは大家さんと、それから......」 「はい、一緒にきました」 落合さんがほんの少し不敵な笑みをみせた。 た、探偵の鋭さみたいなものを感じて......。 あたしはいろんな意味でゾクリときた。 「はぁ.......ダメダメだなあ、あたし。あー、情けない!」 「ははは、まあ、そういうこともありますよ。 とにかく偶然、来る時間帯が同じでラッキーでしたね」 「そ、そうですね! 初めてきて、野方駅から道に迷ったんですけど、 助かりました。あ~っなんだかもうドジばっかり! 仕事でも彼にはよく助けられてるんです」 「野方から?道に迷った?」 「ちょっとぉっ、あなたたちーっ、なごやかに会話してないで、 とにかく彼の生存を確認させてちょーだい! ここは安くてボロいアパートだから、事情のある人も入居するけど 大きな事件なんてなかったのよ。 それに彼とはよく顔をあわせてたし、立ち話しもしてたの。 とっても礼儀正しくて感じの良い青年ですごく安心してたのよ。 そんな彼に何かあったなんて......。 怖いっ、怖いことになってたら嫌よぉっ、個人的にも嫌よっ! 元気に生きてて欲しいわよぉっ」 大家のおばあちゃんがふるふると震えている。
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