第二部 猫と探偵と高円寺

7/45
前へ
/199ページ
次へ
「あああああああああ!!なんか音がした!!」 あたしが叫ぶと同時に、大家さんは急な階段をものすごい勢いで 器用に駆け降りていった。 「いやあああ、もうなんかいやああっ! なんかあったら見たくないいいっ! あ、鍵、鍵......どうしよう、どうしましょう!」 大家というのは、事故物件になってしまうような物騒な出来事は 体験してしまうもので。 ただ、それとは別に彼女はかなりの怖がりらしい。 「俺にも聞こえたなあ......音が」 「え、そうですか?あ、鍵......開いてる」  あたしは思わず部屋のドアを動かした。 「山寺さーん、鍵、空いてました」 落合さんが山寺さんへと声をかけてあげた。 「えええ、開いてるの? それはそれで怖いわよ、 ごごごごっ強盗に襲われたとか......!じじじっ自殺とかっ!」 落合さんが躊躇なくドアを開けきり、ワンルームの部屋全体を見た。 「山寺さん、荒らされたような形跡はありません。 遺体もなさそうです。ただ、何がどうなっているのか、 とりあえず俺たちで調べますから、 あなたは自宅で休んでてください。たぶん時間がかかりますから。 そうですねぇ、1時間後くらいに、また来てください」 「え?俺たち?1時間?あたしもですか?」 「そう、わりと厄介な感じですからね。それくらいはかかるでしょ」 「はあ......?」 なんだ?この人は、何に気づいたというんだろう。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加