第二部 猫と探偵と高円寺

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「犬かあ。そうそう実家が神奈川でチワワを飼ってるって 話してました。たまにしか会えなくて寂しくなるって。 きっとこのワンちゃんですね。 名前は、ポロロちゃんだったかな?」 「俺はネコ派ですけどね。だからちょっと残念」 「いやその情報はいいから。それで?部屋を放置してるって、 なんでわかったんですか?」 「それはね、埃ですよ。 この部屋全体を見るからにして、彼は綺麗好きっぽいですよね。 かなり整理整頓されてる。 本棚のコミックスや小説もキッチリとジャンル分けして 並べられてます。 ベッドもシーツを張りつめてるし、布団も丁寧に折りたたんでる。 脱ぎっぱなしにしたような衣類も無い。 ロフトに置かれてる物も同じく。そんな人なら、 床もこまめに掃除してピカピカにしてないと、おかしいでしょ?」   スリッパが本人用らしきひとつしかないから。 あたしたちは靴下で部屋に居る。 あたしはカジュアルスタイルだから白と黒のストライプの靴下を 履いていて、足の裏をみてみると汚れがわかりやすかった。 「更に本棚にも埃がある。犬の写真だって大事にしてるだろうに 埃がついてる。郵便受けにしても中身がごっそりあったでしょ? ああいうのも整理する筈です」 「な、なるほど」 「でも酷いレベルの汚れじゃない。ほんの少しだ。 1週間、放置していた程度だとすると......。 職場の無断欠勤の期間と一致しますね。それと、そこにあるヤツ」 落合さんが指差したのは、テーブルのそばに置かれている コロコロクリーナーだった。 「わずかに床の掃除へと使用したゴミが付いてる。 掃除をやるなら徹底的にコロコロさせて剥がして捨てるでしょ?」 「す、すごいなあ、探偵って。 そういえば、彼は仕事がとても丁寧でした。 うちの職場って酒屋なんですけど、彼が棚に並べると完璧でしたね。 でも侵入した者はいないって、それはなんで?」 「それが事実だからです」 「は?」 「それについては後で話します」 「はあ......」 「さて、PCをみましょうか」 「え?」 落合さんがPCの置かれたテーブルの椅子に座った。
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