第一部 闇から雨のち晴れ

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「陽輝村の出身で、いま村に戻っている陽輝 (ようき) という男性に 会いにきました。 彼の恋人から相談を受けたんです。 突然、結婚して村で一緒に暮らそうと言われて戸惑っていると。 だから、まず俺が代理として村に行って、陽輝氏と話してみようと」 何も嘘は言っていない。 そして依頼してきたのは、俺がネットで知り合った女の子だ。 ネットからリアルへの初対面が、俺の自宅でもある探偵事務所。 開業祝いにと、わざわざ駆けつけてくれたのだが、実は彼女は 悩みを抱え込んでいた。 そうしてネットからリアルの初対面は、探偵と依頼人へとなったのだ。 ネットでの名は『クリタ』で、本名は『栗田茜 (くりた あかね)』 恋人とは高校生のときに知り合ったそうだ。 それでも『病人として重荷になって彼氏に捨てられることが恐い.....』 という心情を、クリタはネット上に書き込んでいた。 現在は、手術が成功したことで一転して前向きになれている。 病気でやつれきっていた彼女は徐々に回復しても、まだ折れそうに 細く、それでも髪のケアやメイクができて、栗色ロングにシャギーが 似合っていた。 そもそも元から目鼻立ちが整っていて美少女と呼べるレベルだった。 ともあれ『大学を中退して村を継ぐから結婚しよう』と、彼に言われて 唐突すぎて悩んでしまったのだ。 俺は探偵として仕事をこなす為と、クリタを友人として助けたい。 その意志から、村まで来た。 横浜に住む彼女が都心から離れた村へと遠出をするのは、身体にまだ 負担があったせいでもある。
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