第二部 猫と探偵と高円寺

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「落合さんの言う通り、あたしの正体は狸です。 とある神社を寝床にしていた頃に、そこに祀られた神様と仲良くなって いくつかの妖術を授けてもらえました。あたしが人間の世界に 憧れてるから、人間になれる権限もくださったんです。 それからもうひとつ、人間を別のモノに変えてしまう術を習いました。 でもあたしは、上手くやれなくて、それには一週間かかるんです」 「動物が人間なるケースは多いと聞きますが。 人をベツモノに変える術は禁忌でしょ? 人の存在を左右してはいけないから。 魑魅魍魎捕獲管理機関が動きますよ。いや、もうバレてますよね」 「そう、そのちみもうりょほかかかかくかかかかか......言えない」 「とにかく、そこに規約違反で捕まる行為です」 「もちろんそうなんです。 じっさいにその機関に神様は厳重注意を受けたそうです。 それがきっかけで神様は御神木の中に、こもってしまいました。 それで、あたしの術は半端なままになりました。 完全には取得してはいけないと。 神様は、あたしが女性として危険な状況になったときの 護身術として使えるように。悪い奴にだけ使えと、言われました。 でも、それもダメだそうです。 だけど......キイロくんが悩んでいるのが、放っておけなくて」 置物の白い猫がカタリと動いた。 あたしに何か言いたげな感じで。 「ちょっと待って、キイロくん。ちゃんと戻してあげるから」 猫がカタンと倒れた。
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