第二部 猫と探偵と高円寺

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そしてあたしはキイロくんに言った。 『一週間、鍵をかけて住まいの中に居て』と。 仕事を無断欠勤すれば、あたしに様子を見に言ってみて欲しいと。 猪熊さんは、そう言う筈だと、そこまでは予測できたから。 そして『猫になるか?人間でいるか?メッセージを残しておいて』 『そこは人生の選択として大事だから、じっくりと考えてほしい』 『7日後に術にかかって猫になるから、それまでに答えは出して』 と......。 「だからPCがすぐ開いたんですね。それにしたって、木彫り?」 落合さんが腰をかがめて倒れている猫をみつめた。 「言ったでしょ、俺は猫派だって。 だからね、開けてるPCのすぐそばにある、 この猫を見て歓喜したんですよ。彼も猫が好きなのかなって。 でも部屋全体からして犬派だったから、猫に違和感があったんです」 そこも既に気づいてたんだ! 「あ、もちろん本物の猫に変えることはできます。 だけど.......。野良猫は危険だと、さすがに思ったんです。 それで木彫りになれと念じました。 もしも彼が猫になる決意を固めていたとしたら、この木彫りを 意中の相手に渡して、その人のそばにいることも可能かなって」 「人間にそんなことが叶っていいわけがない」 落合さんの声に、これまでにない厳しさを感じて......。 あたしは人間として鳥肌が立った。
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