第二部 猫と探偵と高円寺

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「お、カッコイイ、デカい。いいなあ、俺なんて身長167ですよ」 落合さんが初対面であることなんてㇲッ飛ばして率直に言ってきた。 キイロくんは身長179センチという半端さだけど、確かに全体的に デカい感じだ。 「あ、どうも、木鷺坂上です。それにしても、すっごい! なんかもう、自分の境遇とか忘れて、推理に聞き入ってた! 落合さん?あなたこそカッコイイ!」 「え、そうっすか?はははっ、照れるなあ、なーんてね。 えへへへっ、今回はちょっと気取っちゃいました。 でも、俺の推理なんて関係ないですよ。 キイロくん、君が自分で決意したんだ。 猫にはならないと......。 その時点で、今回の件はもう解決してたんです」 「いえいえ、もちろん思考がいったりきたりで 大変だったのなんのって......」 な、なんだこのなごやかさは! あたしは、あたしは......。 自分のしたことを心底、反省しようとしているのに! そうして肩を落としたまま椅子に座ってるあたしに、キイロくんが 肩をポフポフと軽く叩いてくれたので、ふいに顔を上げた。 「ポンちゃん。何かも見えてたし、ちゃんと聞こえてたよ。 ポンちゃんのしようとしたこと、妖術っての? やっちゃいけないんだってこと。それもなんだかわかる気がした。 妖術っていうか、魔法みたいなことが、ホントに叶ったらダメだ。 本気で野良猫になりたいって思ってたけどさ、 これも想像力に欠けてたよ。 恋愛は、運と相性とタイミングなんだから、僕も甘えてて、 甘い罠に乗ったのがいけない。そのことも、わかった気がする......。 ポンちゃんが今回の件で気づかせてくれたんだよ。 なにしろ一週間、じっくり考えることができたからさ。 こんなの普段じゃ絶対に無理」 やっぱりあたしは泣いてしまった。 近隣住民に迷惑かなって心配しながらも大声で泣いた。
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