第二部 猫と探偵と高円寺

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今度は落合さんが、そっと肩に触れてくれた。 キイロくんが箱ティッシュを差し出してくれた。 「ちょっとおぉっ!なにーっ?なんでそんなに泣いてるのーっ! 近所迷惑になるほど泣いてるとか怖いーっ!」 近所迷惑では同等な気がするほど、大家さんの大声が聞こえてきた。 「タイムリミットですね。キイロくん、一緒に出ましょう。 大家の山寺さん、本気で心配してましたよ。安心させてあげなきゃ」 落合さんが玄関まで歩き、ドアノブに手をかけた。 「え、でも僕、パジャマだし」 「つか、なんでパジャマ?」 「寝転がってばかりだったから」 「まあ、どうとでも言えますよ。あ、キイロくん祖父母いますか?」 「え?うん、80歳のおばあちゃんが」 「ならそのあたりで誤魔化せますね」 と、落合さんがドアを開けた。 「山寺さーん、木鷺坂上くん、無事でしたよーっ! 本土さんは、気が抜けて泣いてしまったんです。 もちろん良い意味ですから安心してください。 彼ね、実家のおばあちゃんが急に倒れたって 連絡があって、大慌てになって。うっかり鍵を閉め忘れて 実家に駆けつけたんだそうです。 それで、おはあちゃんは手術が成功して、ホッとして 自宅に戻って、寝ちゃってたそうです。また鍵を閉め忘れたままで」 ものすごい作り話しで無理があるけどギリギリセーフっぽい! 「まあぁっ、そうだったの! よかったわねぇ、そうよねえ、慌てるわよねえっ!」 大家さんに通じた! 「うちのばあちゃん80歳でも元気すぎて、畑仕事が生き甲斐だけどね」 と、キイロくんが小声でつぶやいた。 それはそれでビックリだ!
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