第二部 猫と探偵と高円寺

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そのあと、キイロくんは大家さんの自宅へと招かれていった。 「疲れたでしょ?大変だったわねぇ、 とにかく空き巣に、はいられなくて良かったわあっ。 っていうか、うちのアパートがポロいせいかしらね、あははははっ! ねえねえ、今夜は肉じゃがなのよ、夕飯、うちで食べていきなさいよ。 あぁ、パジャマのままでいいわよおっ、すぐそこなんだからっ」 強引だけど、すっごく良い人だ。 キイロくんは人間に戻ってから空腹もきたので。 そのまま引きずられていった。 ちなみに山寺さんに憑いてる旦那さんの幽霊も、満面の笑みで あたしたちへと頭を下げてくれた。 「日当たりいいし、広いし、大家さんは面倒見がいいし、 この部屋で過ごす価値ありですね」 落合さんが言うと、キイロくんは困惑気味ながらも笑ってうなづいた。 それは......人間として暮らすには最適であるという意味だった。 そして、とにかく明日には出勤することを約束して、あたしたちは キイロくんと別れて帰り始めた。 「ポンさん、道、こっち」 「は?こっちから来ましたけど?」 「迷ったからでしょ?通常は、こっち」 落合さんが家と家とのあいだの狭い道を通っていくので、あたしも ついていった。   すると.......。 「え、うそ!」 少し歩くと、車が通れるほどの広い道に出た。 そして前方には大通りが見えていた。 しかも!大通りまで出たら右側にはコンビニで。 斜め前にはバス停がある。 「左を真っすぐ行けば中野 (なかの) 右を真っすぐ行けば野方 (のがた)そんで、そこの目の前の橋を 川沿いに真っすぐ進めば沼袋 (ぬまぶくろ)」 「わわわわっ......わかりやすい!」 「そうなんです。野方から来たなら大通りからコンビニを曲がって すぐなんです。なんでポンさんが迷ったのか不思議でしたよ。 ともあれ、高円寺も近いし、自転車で行ける駅が4つ。 便利ですよね。やっぱり良い部屋だ」 「ひどいっ!あのおまわりさん.......! 意地悪して、ややこしい道をおしえたんだ!」 「おまわりさん?」 「はいっ!野方駅の駅前の交番」 「ふーん.......」 「な、なんですか?」 「それは、キツネにつままれた。いや、キツネじゃないかな」 「もったいぶらないでおしえてください!」 「交番にもう一度、行けばわかりますよ。 じゃあ、俺はここで。コンビニで買い物をしてから、 バスに乗って中野駅まで行きますんで」 「あ、あの、落合さん......」 落合さんが軽く手を振ってコンビニへと向かっていった。
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