第二部 猫と探偵と高円寺

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「おや、さっき道を聞いてきた、お嬢さんじゃないですか。 無事に行けましたか?」 キイロくんよりもう少し背の高い警察官が、笑顔で言ってきた。 「あなた、なに?キツネじゃないとしたら、なに?なんの動物?」 駅前の踏切の手前の交番、道を挟んで駅へ続くエスカレーターの 階段、その横の広場に集う人々、平日なので、仕事帰りや夕飯の 買い物で人があふれる普通の情景のなかで。 あたしは、おまわりさんがおまわりさんではないと.....。 ようやく気づくことができた。 というよりも、人の振りをやめているのかもしれない。 「動物?おまえと一緒にしないでくれよ。 こちらは人の姿として使命を全うすべくして、 生み出された存在だ。成すべきことの重大さが違うんだよ」 うわっ、えらそうっ!こいつ、超亡霊捕獲管理機関の一員だ。 背の高さも口調も直属の部下にいるって聞くのと一致してる。 「そ、それで、あたしに意地悪したのはどんな使命なんですか?」 「意地悪とかの問題じゃない。 まあ、長く歩かせてはしまったが、おまえの為だ。 落合が、あのアパートに大家と一緒に来る時間帯......。 それに合わせてやったんだ」 「えっ!」 あれは、偶然じゃなかったんだ......? 迷わせることで居合わせるように調節したってこと? 「いいか、今回の件は、本来なら規約違反として おまえは裁かれる身なんだ。 だが、無知であることを考慮されたうえで、自身のしたことを 理解して反省させる。その方向で決定されたんだ。 それには、落合が推理して、徹底的におまえを追い詰める。 その必要性があったということだ」 「えぇーっ!落合さんもグルだったの?」 「あのなあ、あいつがそんなことをするようにみえたか? 我々でもあの男の存在には手こずってるんだ。 協力するわけがないだろ。 あいつはあいつで、今回の件に巻き込まれたんだよ。 本人は、どうせお見通しだろうけどな。 なにしろ聡明で、そして優しい探偵だからな」 落合さんのこと、煙たがってるようで認めてるんだ? 「そっかぁ......。言われてみれば、納得のいく流れだわ」 「そなこと言ってる場合か、馬鹿もんが。 今後、二度と妖術は使用するな、鍵を開けることも含めてだ」 「あ、あれは、普段はできませんよ! 念じてる期間で、あの部屋だから、開けられたんです。 あたしはね、ものすごーく不器用なんです!」 「威張って言うことか。 とにかく.......無事に終えて何よりだ。ホッとした」 警官の帽子を脱いだ彼はオールバックだった。 そして次第に薄らいで消え去った。 なに?最後の言葉!ちょっとツンデレ?
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