第一部 闇から雨のち晴れ

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「あぁ、陽輝章真 (ようき しょうま)ですな」 会いに行く人物の下の名前は出さなかったのに、男は言い当てた。 当然ではあるのか?とも思った。 なにしろ村の地主の息子だから村の名前と同じというか、名字から 村の名は付いたのだから。 「彼は立派に成長してくれた、自慢できるような良い子に育った。 そうか、好いた相手に顔を見せぬとはいけないな、仲直りしなさい、 分かり合えぬのは、良きことではないな」 「はい、そうさせていただきます」 昔話に出てくる老人のような妙な言い回しに違和感もあり、俺は早々に 彼から離れようと軽く会釈してからトンネルへと向かった。 すると。 「トンネルの中で話しかけられても、絶対に声を出してはいかんよ」 と、背後から男に言われた。 俺はその言葉に振り返り、トンネルをみて、また男へと振り返った。
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