第二部 猫と探偵と高円寺

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そうだよなあ......とか、あたしは今更ながらに思ってる。 あの一件から2週間が経った、いまごろになって。 あたしのしたことは、なにやら勝手に取り締まってる機関とは 別問題と考えても、やっちゃいけないことだった。 あれから、あたしなりに色々と調べてみたんだけど、神様でも 人の生死には関わらないんだと知って驚いてる。   この世界の道理的にも、道徳的にも、モラル的にも。 すべてが反してる行為だったんだ。 妖術で人を変えることも。 それで恋の苦しみから逃がしてあげることも。 そういうのを、いまは自覚してる。 自覚できてる。 それは、あの警官に化けてた男の言う通り、落合さんが徹底的に あたしを追い込んでくれたからだ。 そして......厳しく、優しく、誠実に接してくれたからなんだ。 あのまま自分だけで部屋の鍵を開けてキイロくんのメッセージを 発見して元に戻したなら......。 あたしは何も学ばず、同じ過ちを繰り返していたかもしれない。 「はああああああっ.......まいった!馬鹿すぎる!なにかも!」 レジ台のあるテーブルで山盛りの伝票を吹き飛ばす勢いで。 ため息をついてから、わめいた。  「ポンちゃーん、しっかりしてよ。今日は八木さん休みだし、 僕は配達が多いから手伝えないよ」 と、キイロくんに言われた。 キイロくんはガッツリと働いて、休んだぶんを取り戻してる。 ちなみに店長の猪熊さんにも八木さんにも、とりあえず落合さんの 作り話しが無難じゃない?という感じになって、実家の祖母の急な 手術に混乱しすぎて連絡するのを忘れていた。 と、説明して詫びたら......。 それで通じて理解されて、無事で良かったと安堵されて解決した。 ちゃんと職場復帰も、できた。 みんな良い人すぎだわ。
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