第二部 猫と探偵と高円寺

31/45
前へ
/199ページ
次へ
「いやいやいやいや、ないわー、ないわー、この人が神様? あ、人じゃないのか!でも、ないわー、 だって、おもっきし地味じゃん。普通じゃん、 いや存在感は確かにありますけど。 テレビドラマで主役のイケメン俳優の勤めてる会社の上司で、 紙コップの出る自販機コーナーでコーヒーを飲んでたら、 横からやってきて、からかいながらも名言を告げて、 フラっと去っていって、 ネットで『あのシーン良かった』とか、言われるような? そんな立ち位置の脇役系でしょ!!」 「わかりやすいわあ、それ」 言われた猪熊さん本人が深くうなづいてきた。 神様!なに納得してんの! 「まあまあ、わからんでもないです。 いやテレビドラマは観ないから、わからんけど。 俺もねえ、神様についてはあんまり見抜けないですよ。 さすがに化け具合いが半端ない。 以前に神様に遭遇したときも、最初はわからなかった」 「そうだねえ、私はそもそも引退した神様だから、尚更にだよ。 いまはね、ただの人間の振りしてる、元神様。 もう人としてのほうが長いよ。 あ、お茶をいれるね。人間として客人のためにね」 「あ、神様、じゃなくて、店長?お茶ならあたしが」 「ポンちゃんは日本茶を濃くしすぎちゃうからダメ。私がやるよ。 ほんとにね、もうすっかり人間なのに、 どうしてもできないとこあるよね」 「ふえぇっ......」 「ポンさん、どんまいですよ」 それこそポンポンと音がしそうに、あたしの肩を叩いた落合さんが パイプ椅子に座った。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加