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高齢男性の八木さんは、猪熊さんのことを『あの人は神様だ』
と、言っている。
もちろんそれは比喩的表現として。
八木さんは経理の大ベテランで、とある会社で20年も勤めていた。
ところが、ずっと世話になっていた社長さんが亡くなり、息子さんが
跡を継いだ途端にクビにされた。
理由は『しょぼくれたジジイはいらねえ』という馬鹿げたものだった。
八木さんはあらゆる気力を失い......。
高い高い橋の上から飛び降りようと決意していたところで、猪熊さんに
声をかけられて、涙ながらに事情を打ち明けた。
すると『うちで働いてくれないかな』
と、その場で採用されたのだそうだ。
確かにそれは神様だね。
そして、自動的に社長になったようなポンコツな人もいるという
見本でもあった。
ちなみにその後、会社は倒産してしまったそうだ、そりゃそうだ。
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