第二部 猫と探偵と高円寺

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高齢男性の八木さんは、猪熊さんのことを『あの人は神様だ』 と、言っている。 もちろんそれは比喩的表現として。 八木さんは経理の大ベテランで、とある会社で20年も勤めていた。 ところが、ずっと世話になっていた社長さんが亡くなり、息子さんが 跡を継いだ途端にクビにされた。 理由は『しょぼくれたジジイはいらねえ』という馬鹿げたものだった。 八木さんはあらゆる気力を失い......。 高い高い橋の上から飛び降りようと決意していたところで、猪熊さんに 声をかけられて、涙ながらに事情を打ち明けた。 すると『うちで働いてくれないかな』 と、その場で採用されたのだそうだ。 確かにそれは神様だね。 そして、自動的に社長になったようなポンコツな人もいるという 見本でもあった。 ちなみにその後、会社は倒産してしまったそうだ、そりゃそうだ。
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