第一部 闇から雨のち晴れ

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長さ三メートルあるかないかという距離で、真っ直ぐなので向こう側が 見えているし、そこには、誰もいない。 「誰にも、話しかけられることは無さそうですが?」 それってよくあるパターンすぎてつまんねえっすよ! くらいは言いたかったが、言わないでおいた。 「入ればわかるよ、トンネルの中にな、女がおる、綺麗な女がな、 白い着物を着た黒い髪の女がな、おまえさんに話しかけてくるのだよ。 絶対に声を出してはいかんよ、いろいろしてくるが無視しなされ」 いろいろしてくる......とは、なにをだ?なんだかいやらしいな。 「声を出すと、どうなります?」 「声を出せば、喉から魂を吸い取って殺してしまうのだよ」 近くで鳥が高く鳴いて、俺の『ひぃっ!』と、叫んだ声と重なった。
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