第二部 猫と探偵と高円寺

40/45
前へ
/199ページ
次へ
ステージが終わり、キイロくんは泣いていた。 彼はステージに感動してよく泣くそうで、今回も常連の客たちは そっと見守っている。 「キイロくん......」 あたしはかける言葉がみつからなかった。 「大丈夫、ポンちゃん、これは更に惚れた涙だよ。 育児の為にライヴ数を減らすとか、夫として尊敬した!」 「そっか、よかった。よし、おごるから飲みなさい!」 「ありがとう、ポンちゃん」 キイロくん。 君の片思いが無事に消化されて。 新しい恋ができるように願ってるよ。 「もちろんこれからもライヴは観に行く。 やっぱり人間がいいよ。猫じゃダメだ」 「あぁ、ごめんなさい!」 「違うよ、あの体験があったからこそ、そう実感できるんだ」 「そっか、良かった、もっと良いこと起こるといいね」 あたしのやったことは無駄じゃなかった。 そう思えた夜だった。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加