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第二部 七空村
公園のベンチで缶コーヒーを飲んでくつろいでいたら、隣のベンチで
泣いている女性が目に止まった。
滑り台と砂場とブランコがあるくらいの小さなスペースだが、子供たちの
笑い声と泣き声と叫び声が響いている。
俺は立ち上がり、自販機にいってペットボトルの水を買い、そして泣いてる
彼女のところへ行った。
「水分補給どうぞ。あと、これ」
と、ポケットティッシュを渡した。
涙とは美しいものという感覚が人にはあるが、鼻水もついていくる。
鼻をかまなきゃならないのが現実だ。
「あ、あの......」
男を相手に、もちろん女性は警戒してきた。
「ナンパじゃねえっす。なーんかね、あなたの泣き方が気になって」
「え?」
「鼻水でてますよ」
「あ、もらいます、すみません」
女性はポケットティッシュからティッシュを取り出し、大きく音を鳴らして
鼻をかんだ。
「水も」
しつこく俺は差し出す。
女性が俺を見上げた。薄手の花柄のワンピースの上に薄紫のカーディガン。
フラットなシューズ、黒髪を後ろでまとめてアップにしていて、質素な
印象だが艶のある美女だった。
「いただきます」
ようやく彼女は受け取り、キャップを開けて飲んでくれた。
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