第一部 闇から雨のち晴れ

6/40
前へ
/199ページ
次へ
「それって、怨霊とかですか?こんな明るい時間に?」 自分の腕時計をみると午後2時を過ぎたところだった。 午前なら信憑性もあったのだが。 「妖怪だよ、村の守り神に仕えているのだ。 しかしタチの悪い妖怪でな、よそ者の命を奪ったりもするのだ」 男が右腕をゆっくりと伸ばしてトンネルを指差した。 「だがな、声さえ出さなければ魂は取られん、安心して通りなされ」 何が安心できるというんだ......。   「あっ、そういえば、あなたは林の中から出てきましたよね? トンネル以外に道があるということですよね?」 「無理だよ」 「は?」 「初めて陽輝村を訪れる者はな、必ずこのトンネルを通らねばならぬ。 ここ以外からは村へは行けぬのだよ、そうなっておるのだ」   なんてめんどくさいんだ。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加