第二部 七空村

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「私ね、再婚できたんです。相手は子供がいなくてもいいって、 そう言ってくれて。彼の家族も受け入れてくれて。 嬉しくてね、もう苦しまなくてもいいんだって。 そしたら、子供をみると辛かったのが、自然と愛しくみえて。 それで泣いていたんです。子供たちごと世界が愛しくて」 「そうだったんですか。よかった、嬉しさの涙だったんですね」 俺は、ふと恵麻さんのことを考えた。 彼女もまた、子供を産めない身体の女性だ。 人の姿をしていても、身体の形成的に妊娠する機能が無いのだ。 恵麻さんもこんな悲しみを抱えているのだろうか? どうにか希望の持てる道があって欲しい......。 「私、自殺サイトでブログを書いていたほどなんです」 「え?」 「それなりに人気ブログだったんですよ『王生、行ってきます』 名字が『いくるみ』っていう、珍しい名字で。 いまは再婚して石川(いしかわ)ですけど」 俺は思わず座っていたベンチから身を乗り出した。 「そのブログ、俺も見てました!」 「えぇっ?」
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