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それは遠くも近くもない過去の出来事......。
青々とした竹藪に囲まれた長い石段を登った先に。
和風な平屋の屋敷がある。
家主の名は『七空眞先 (ななぞら まさき)』
一代で事業を成功させて社長になった実力者だ。
屋敷の裏には先代たちの眠る墓地があった。
眞先は先祖のそばで暮らし、いずれ自身もそこへと入る為に
実家を豪邸に建て替え、高級車2台は石段の下に屋根付きの
ガレージを作って置いていた。
そして妻の『麗美 (れいみ)』が、家と会社の跡継ぎとして
相応しい男児を産んだ。
それが、俺と藤生だ。
俺たちは二卵性の双子として生まれたのだ。
とはいえ双子にも長男と次男の区別がある。
俺は長男として跡継ぎとして、親の名前から『眞麗 (まれい)』
と、名付けられた。
家の庭に藤棚があったので、弟は『藤生 (ふじお)』
と、名付けられた。
財力があり、小さな田舎町とはいえ住みやすく便利であり
俺たち家族は幸せに暮らせていた。
藤棚が台風で壊れて、変わりにと百日紅(さるすべり)の木を植えた。
あの日までは......。
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