第二部 七空村

7/50
前へ
/199ページ
次へ
それは遠くも近くもない過去の出来事......。 青々とした竹藪に囲まれた長い石段を登った先に。 和風な平屋の屋敷がある。 家主の名は『七空眞先 (ななぞら まさき)』 一代で事業を成功させて社長になった実力者だ。    屋敷の裏には先代たちの眠る墓地があった。 眞先は先祖のそばで暮らし、いずれ自身もそこへと入る為に 実家を豪邸に建て替え、高級車2台は石段の下に屋根付きの ガレージを作って置いていた。 そして妻の『麗美 (れいみ)』が、家と会社の跡継ぎとして 相応しい男児を産んだ。   それが、俺と藤生だ。 俺たちは二卵性の双子として生まれたのだ。   とはいえ双子にも長男と次男の区別がある。 俺は長男として跡継ぎとして、親の名前から『眞麗 (まれい)』 と、名付けられた。 家の庭に藤棚があったので、弟は『藤生 (ふじお)』 と、名付けられた。 財力があり、小さな田舎町とはいえ住みやすく便利であり 俺たち家族は幸せに暮らせていた。 藤棚が台風で壊れて、変わりにと百日紅(さるすべり)の木を植えた。 あの日までは......。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加