第二部 七空村

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『さるすべり』という名は『猿が滑るほどなめらかな樹木』 という意味合いがある。 百日紅には様々な種類があり、我が家に植えられた木は 薄紅色の花を咲かせた。   そして、その名の通りに猿が寄って来た。 しかも7匹も。 その猿たちは毎日、昼から夕暮れ時まで百日紅で遊ぶようになった。 登り切れぬのに滑り続け、それさえ楽しむかのように飽きもせずに 登っては滑り、それを繰り返していた。   専業主婦の母は、俺たちが手のかからない小学生になってから 暇をもてあまし、猿たちを可愛がるようになった。 猿は無邪気に鳴き、凶暴性が無く、危害を加えずにいる。 両親は安心して接していた。
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