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「兄さん、ニホンザルって、すごく利口なんだそうだよ。
ほら猿に芸を仕込んだりするだろ?
簡単な計算もおぼえるんだって。すごいね!」
日常に猿がいて当然の生活になった日々において。
藤生は、動物そのものに興味を抱き、元からの頭の良さで
勉強に励み、獣医になりたいという夢を持つようになった。
「タヌキとかキツネとかイノシシがいなあ。猿は見飽きたよ。
っていうか、おかしくないか?あいつら、七匹もくるなんてさ。
うちの名字の七空と同じってのが、なんか引っかかるんだよ。
それに、なんで百日紅を植えたら来たんだろう?
登りやすい木なら他にあるのにさ。
ほら、奥のほうにある桜の木とか、木の幹が低く広がってて
登りやすいじゃん。そっちにすればいいのに、何があるんだろう」
子供部屋の窓からみえる百日紅を眺めて、俺は眉をしかめて言った。
ちなみに幹の低い大木の桜は『シダレザクラ』なのだと。
後になって知った。
「すごいよ兄さん!なんだか探偵みたいでカッコイイ!」
「はあ?」
その発想はなかったので。
驚きつつも、内心では褒められたようで照れていた。
何をしても俺より優秀な藤生に対して、嫉妬も多少はあったからだ。
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