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「ノナは? 何か見つけた?」 「あ、いえ。その……」  広場を歩き、露店の散策中。  ノナの視線の先には一張の遊技場があり、その看板には「射的」の絵が書かれている。  玩具の弓を使って的を射落とすそれは、祭りの場によくある出し物。  いまはひとりの男の子が、ひとりの女の子が見守る前で弓に矢をつがえ、可愛げのない害獣を模した標的を狙っていた。 「的あて? ふぅん。子供騙しね」 「やっぱり、そうですよね……」  フェマは一言で切り捨てて、ノナは困った表情を浮かべる。  射的場の男の子は矢を放し、緩やかに弧を描いたそれは真っ直ぐに標的へ。  そしてそれは、標的の胴をパシリと打つが、標的はフラフラと揺れた後、辛くもその場に踏みとどまった。 「惜しかったなボウズ。ほれ、残念賞だ」  店番の青年が小袋を渡す。店の景品一覧に「ハズレは小豆」の文字。  男の子の手元には既に4個、その小袋が転がっていた。 「おっちゃん。もう一回」 「ゆ、ゆーくん。もういいよ」  お小遣いの銅貨を差し出す男の子を、女の子が止める。 「だいじょうぶだって。ぜったいに取ってやるから」 「でも、ゆーくんのおこづかい、なくなっちゃうよ。ほかのおみせ、いけなくなっちゃうよ」  男の子が頑張るのは、この女の子のためらしい。 「ぅ……。あ、あと一回。あと一回でぜったいに取るから」 「…………」  女の子は、言葉を返さない。そして、その表情は曇っている。 「仕方ねぇなボウズ。内緒で一本だけオマケだ。こいつでダメなら諦めな」  子供相手に情が湧いたのか、店番の青年が矢を恵む。 「おっちゃん、いいの?」 「おっちゃんじゃない。お兄さんだ」  男の子に矢を渡し、青年は少し不機嫌そうに腕を組む。繊細な年頃らしい。 「見ててよ、クー。ぜったいに取るから」  男の子は矢をつがえ、弓を引く。そして、緊張で震える手から、それは放たれた。
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