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何度かの世界で純粋無垢な少女だったが、その大半は性根の腐った女だった。だからこそ私に全ての罪を押しつけるため宰相や枢機卿イアンと結託して──全てを奪った。
許されざる敵だ。
「お前さえいなければああああああああああああああ」
怒りが全てを喰らい尽くす。
視界が真っ赤になっても、この体が崩れようとあの女さえ殺せればどうでもいい!
そう伸ばした手を掴んだのはアメリアで、そのまま引っ張って私を抱きしめる。その隙にウィルフリードがリリスを切り捨てたのが見えた。
「あ」
『ぎゃああああ!』
『よくも俺のアメリアを』
『私からも最高の悪夢を数兆倍の時間に引き延ばして貴女に贈るわ。精々楽しんでね。自称ヒロインさん』
守られた?
こんな姿になった私を?
誰も私を助けてくれなかった。
守ろうとしてくれなかったし、抱きしめてくれなかったのに──アメリアは私を抱きしめてくれる。
ふと私の傍にルイスやエルバート様、ランベルト様、そしてローザがギュッと抱きしめてくれていることに気付いた。
薄らとだが、でもわかる。もしかして私がこんなになっても、傍に居てくれた?
一人だと思っていたのに、ずっと見えてなかったのは私だった?
『長い旅路をお疲れ様でした。もし貴女が望むのなら私の中で安らかな眠りを。そして私がこれからどんな国を作ってくのか見ていてほしいの』
ああ、私であり、私とは違った道を選んだアメリアはとても強くて、優しいのね。
「それが許されるのなら……私も連れて行って」
『喜んで』
視界が歪んだと思ったら、自分が泣いていることに気付いた。
子供のように泣き崩れる私を、アメリアは頭を撫でてくれた。なんだか子供に戻ったみたい。
しかも頭を撫でる手が心地良い。匠の御業?
『ああ、いや、いやよ、いやあああああああああああああ』
深い眠りにつく中、リリスの絶叫が耳に届いたのが少しだけスッとした。
「『ざまあ』」
ふと私もアメリアも同じことを呟いて、少しだけ可笑しかった。
ああ、このアメリアも私なのだと、当たり前なことなのになんだかそれがすごく安心できた。優しいだけじゃなくて、強くて残酷だけれど、キッチリと落とし前は付けるのだと──。
貴女とこの先が一緒に見られると思うと嬉しいわ。
この後、深く眠った後で私は始祖ナイトロード様と謁見を果たすのだが、『アメリアを見守る会』ができるのはまた別の話。
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