第32話 剣を捧げた主人は──

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 うん、ベルフォート侯爵の反応もいつも通り。とにもかくにも行動を開始する。 「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」  叫び声によって周囲の建物が崩れ、砕けていく。そんな中できることは足止めだ。しかも異世界の私が攻撃を受けると、私もダメージを受ける。 「あれが倒せないのは、この世界に私が二人存在しているから。けれど私と魔神とのHPは果たして同じなのかしら。魔神が消滅するまで私が生き残れば片方が消える、なんてことは?」 「あったとしても女王陛下にそのような危険な真似はさせられません」 「そうだ。二年前も似たようなことをして瀕死になっただろう」 「ゴメンナサイ」  忠義者同士、馬が合うのかベルフォート侯爵とウィルフリードは、畳みかけるように私の提案を却下された。君たち気が合いそうで何よりです。 「となると打倒なのは、封印ってところかしらね」  術式を書き上げるまでの時間があれば──。  ただこの方法も魔神を封じる場合、私も封じられる可能性があるということ。  ゲームではアメリアが闇堕ちしてラスボスとなったらヒロインが倒すか、国が滅ぶの二択しかない。私が生き残る方法……。  んー、あとは対話あるいは魔神を私が取り込んで、支配権を私が取得する?  どちらもリスクが高いけれど別世界のアメリアだったのなら、その苦悩を解放してあげたい。だって眼前にいる魔神は、私がなり得た未来の一つなのだから。  ゲームのアメリアは誰も助けてあげられなかった。守りたい者を奪われ、貶められて、悪役を押しつけられた──。  その事実と思いを、あり得たかもしれない私と対峙することで解決が見込めるかもしれない。 「ウィルフリード、侯爵。蒼薔薇の茨を通して魔神と接触を図るわ。魔神の魂と対峙して内側から崩せないか試してみる」 「なっ」 「そのような危険な真似をせずとも」 「あれはアメリア、未来であり得たかもしれない私だわ。なら、その尻拭いも自分がすべきだと思うのよ」 「しかし……」 「アメリア、君は一度決めたら譲らないだろう。……なら俺も一緒に連れて行ってくれ」 「そうね。ウィルフリードが傍にいるのなら、力強いわ」  私のことをよく分かっているウィルフリードの切り替えは本当に助かる。すぐさま茨を通して魔神の精神へ接続させた。  さあ、自分と向き合う時間だわ!   ちゃっちゃと終わらせてこの国を簒奪させて貰いましょう!
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