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「ナイトロード様お会いできて、光栄でございます」
「うむ。侯爵だったか、今後ともアメリアのため忠義を尽くせ」
「ハハッ! ありがたき幸せ」
「さて本来なら我の出番ではないが、この男に此度の策を授けたのは我だ。故にアメリアが無事に生還したことで、今までの不敬は不問とする。もっとも納得できぬのならアメリアに決めさせるが良い」
始祖の出現に魔王と死神は殺意を引っ込めた。アメリアと接する時とは違い、忌々しそうに顔を背けた。
「チッ、婚約者だと。余はアメリアから聞いておらんぞ。たしか婚約破棄したのではなかったのか?」
「契約書にサインを迫られただけであって、教会に提出してなければ受理されていないぞ」
「婚約者……家族とは違うのか?」
「死神、お主は少し黙っていろ。話がややこしくなる。そして何故お前は知らないのだ」
「僕が近づくと契約書でも灰になるからだが。……魔王はさっさと自分の国に戻ったらどうだい?」
「あ?」
苦み合う二人だったが、すぐさまベルフォート侯爵が割って入る。
「お二人とも少々よろしいでしょうか。……ありがとうございます。実は第二王子エルバート様が亡命していたようです。どちらか軽い報復と裏取引をして来て頂けないでしょうか? 本来であればウィルフリード様に頼むべきですが、我らの女王は彼に傍にいるよう命じてしまったので……。これほど重要な仕事を信頼置けるのはお二人のどちらかと思うのですが」
「しかたがない大親友の余が行ってやろう」
「家族の僕が行くべき案件じゃないかなぁ」
アメリアが魔王と死神を仲間にしたことは分かっているが、この二人の関係性は一体……。落ち着いたら聞いてみよう。始祖は役割が終わったといわんばかりに、唐突眠りについた。やはりアメリアと雰囲気が違う。
後日、アメリアが二日経っても目覚めないことで、状況はカオスな状況へと陥ることを──この時の俺はまだ知らなかった。
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