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冥界の使者バルリングを含めた側近がどれだけ頑張っても、死者の対応が追いついていなかったが、目に見える形で死後の対応の差、優遇度合いを知ることで生者には道徳性と因果応報をしっかりと学んでもらいたい。
また死者は死後によって自身を振り返る時間と、身内との再会、そして死を受け入れる期間を設けた。特に唐突な死は一族にとっても後継者問題が発生しやすい。痴情のもつれ関係や複雑な事情は、あらかじめバルたちがフォローを入れる形で話を進めている。
とまあ、そんな話をベッドで寝たきり──というか起きたいけれど、周りが心配するので起きられない私はただ聞くばかりだった。
いやー、目を覚めたらお葬式かお通夜かってぐらいとんでもなく辛気くさい雰囲気で、一瞬気が遠くなりかけたものだ。少し寝過ぎたぐらいで大袈裟な気がする。
「ねぇさまあああ」
「おねーさま!」
ルイスとローザが十歳の姿でボロ泣きしているのを見た瞬間、卒倒しそうになったのを耐えた私を誰か褒めてほしい。いや褒めて!
魔王城に戻ってきたらしく、広めの部屋の片隅には絵画を描き続けているアルムガルドと、楽譜を書き続けるジュノンが目に入った。誰も止めなかったのだろうか。
正直いってカオスだ。目覚めてツッコミ役が誰もいないことに戦々恐々となる。
いや、こういう時は、ベルフォート侯爵が──。
「女王陛下、お目覚めになられて何よりです。下僕でありながらお守りできなかったこと、この命をもって罰とさせて頂ければ」
「──って、なに切腹しようとしているの! ストップ! ウィルフリードも剣を収めなさい!」
「わ、わかりました」
この世界に切腹なんて文化があったことも驚きだけれど、何よりもなぜ誰も止めないのか! ウィルフリードも──って、彼も忠義馬鹿だったぁあああ!
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