第11話 魔王と死神とのお茶会

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 アルムガルドはフライドポテトをパクパク食べながら、コーラを流し込む。何ともワイルドな食べ方だが魔王が、そんなジャンクフードを食べて良いのだろうか。魔界──魔王領地では稀に転生や転移者が来るので、こういった食べ物は多いらしい。 「エーレン様は、勇者のことで何か知りません?」 「んー、僕は魂の色で判別しているから、死んだ後は魂の色が大きく変わるから判別ができないんだよねぇ。もしかしたら邪気を灰にする時に見かけた……かもしれない」 「「…………」」  のほほんと答えるエーレンは兎を愛でつつ、ケーキを食べるのに夢中だったようで私たちの視線に気付いていないようだった。 「エーレン様、さっさと居場所を吐いてくれないと兎さんを回収しますよ」 「そうだな。用意したケーキのお代わりと、紅茶も下げるぞ」 「いつから君たちは仲良くなったんだい?」 「「いいから!」」 「……むう。魔界との国境付近にある《迷わせの鋼森》で死体周辺が邪気まみれで、灰にするのが大変だったかなぁ~」 「アルムガルド様」 「みなまで言うな。わかっている」  アルムガルドは、すぐさまルディーに指示を出した。ちょっと見直したわ、魔王!  そういえば冥界の使者はいつ頃くるかしら? 無視されなければいいけれ──。 「う゛わぁあああああん! ナイトロードぉおお! 聞いてくれよぉおおおお!!」  あ、きた!  空間が歪んで姿を見せたのは赤毛の髪に、ケモ耳が印象的な青年だ。黒い聖衣に身を包んだ彼は瑠璃色の瞳をしており、体格も良い。文官というよりも武官が似合うわね。  彼は冥界の王の側近、バルリング・ルプス。ゲーム設定ではよく迷子キャラとして登場し、物語の根幹の話や、キーワードアイテムなどを教える重要キャラでもある。もっとも幾つかのルートによってはタイミング悪く獣姿で遭遇してしまい、魔物だと勘違いしたヒロインと攻略キャラが倒してしまう胸糞展開があるのだ。もうこのゲームあるある勘違いすれ違いエピソード。  しかもバルリングは三兄弟で、兄たちが復讐としてヒロインを狙う展開もある。特に一番上の兄はヒロインと親しくなってから、弟の仇だと知って魔力暴走によって町一つを破壊しかけて大騒動を引き起こすのだ。あるある展開だけど、辛いだけ!  そんな未来にはさせない!   そして冥界のシステムを復讐に使わせて貰うためにも……ここは頑張りどきだわ。  ふふふっ、と邪悪な笑みを浮かべて私は扇子を取り出した。悪役令嬢じゃないけれど、強気な姿勢は大事よね!
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