第2話 黒幕と悪役令嬢1

1/4
前へ
/139ページ
次へ

第2話 黒幕と悪役令嬢1

「貴女が気を失ってからに既に二週間が経っております。その間に、貴女様への容疑が固まったようです」 「それでウィルフリード様が婚約破棄を言い出したのですか?」 「ええ。人外貴族として魔力暴走を行っただけではなく風魔法で、多くの貴族を傷つけていました。またリリス嬢の毒殺未遂の容疑者でもありますからね」  ウィルフリード様が?  もし本当にそうだったとしても、彼なら自分で言いにくる。目が醒めた後も頭がぼんやりして思考がうまく働かないし、体が軋むように痛い。  魔力の暴走が……抑えられない?  今までこんなことはなかったのに……。 「……アメリア嬢、及びナイトロード公爵家は、第三王子にして王太子となるスチュワート殿下に取り入るため未来の婚約者となるリリス嬢を毒殺しようとした。そうであろう」 「……違います」  否定するたびに息が苦しくて、頭が割れるように痛い。それでも違うと答えると、イアン枢機卿は盛大なため息を吐いた。 「今、アメリア様が婚約破棄と国家反逆罪をお認めになるのなら、一族……、妹君と弟君への処罰は差し止めて差し上げましょう」 「なっ!?」  その条件を飲む以外の選択肢がない。外の状況が全くわからないまま、この提案は危険すぎる。それでも弟妹を人質にされたら、打つ手はない。  腹立たしいが、ディカルディオの用意周到かつ二手、三手先まで読んでいた策謀の勝利なのは認めざるを得ない。それに私は負けた。  でもルイスとローザのことを出されてしまったら、もう私は動けない。  私の大事な弟と妹に何かあったら、胸が張り裂けるよりも辛い。 「誓約書に誓って頂けるのなら──」 「小賢しい真似を……ですがまあ良いでしょう」  あのパーティーでの断罪の場から、どれだけの罠を張り巡らせていたのか。まんまとしてやられたことが悔しくてしょうがない。近年では人外貴族に対しての風当たりが強く、貴族たちの中で不満などが膨れ上がっていた段階での今回の一件だ。人外貴族全体を叩くのに都合がいい──いや良すぎる。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加