第11話 魔王と死神とのお茶会

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 冥界の王クリストフ・アルカナムは紳士かつ一途なのだが――彼の恋人、あるいは伴侶になるには、毒や瘴気耐性が必須なのだ。それも冥界の王と同等あるいは、それ以上でなければいずれ心と体を蝕む。  冥王の伴侶は冥王自身の力を維持するためにも、必要不可欠な存在となる。以前は仮契約でなんとか凌いでいたが、そのあり方も限界だったのだろう。  クリストフは異世界転移を行い、様々な世界で自分の花嫁を探し、そしてその途中で《葬礼の乙女と黄昏の夢》のヒロインと信号が切り替わるところですれ違う。その時にトラックに引かれそうな彼女を助けるために、異世界に送り込んだ――というのがゲームシナリオ本編の前日譚である。  ちなみにこの前日譚は、二周目で解放設定だ。当時のヒロインの服にクリストフの魔力が染みこんでいたため、バルリングがヒロインと遭遇したのもクリストフの魔力を追ってきたという伏線回収がされるのだ。  私個人としては「冥王のせいじゃないか!」と思ったが、偶然が重なった不幸な一件でもある。そんな訳で冥王クリストフは二周目の中盤で、この世界に戻ってくるものの魔力不足で三本足のカラスの姿なので本来の姿は分からずじまい。  ゲーム上、無条件でリリスに味方するだろうから、今のうちに冥界の権限も私に半分以上返却してもらいましょう♪  そう思考を巡らせている間に、魔王と死神が自分の欲望を意気揚々と語っていたので、慌てて話を先に進める。 「異世界転生者の私がいろいろ再現してあげますから、間違っても行こうとしないでくださいね」 「そうだったのか。どおりで余を恐れぬ訳だ」 「あ。そういうこと。僕に接触して時から、ずっと不思議だったんだよね~。でも異世界人なら納得だよぉ」  今度も賄賂を渡して刺激と感動を与えることを忘れないようにしないと。これから彼らとの付き合いは長くなるのだから。  そしてバルリングは、異世界という言葉が衝撃過ぎて放心していた。気持ちは分からなくもない。気を引き締めて、私は姿勢を正した。 「さて、本題に入りましょうか」
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